ベースアップ評価料を算定するには、地方厚生(支)局への届出が必須です。とくに「賃金改善計画書」の作成は、毎年つまずくクリニックが後を絶たない項目です。
この記事では、2026年(令和8年)の診療報酬改定に対応した様式95・別添2の記入方法を、職種別の具体的な記入例付きで解説します。最後まで読めば、差し戻しされない計画書の書き方が身につきます。
賃金改善計画書とは
賃金改善計画書は、ベースアップ評価料で得た収入を実際にスタッフの賃金改善に使うことを証明する書類です。届出書添付書類の一部として、様式95と別添2を提出します。
| 様式名 | 内容 | 提出タイミング |
|---|---|---|
| 別添2 | 特掲診療料の施設基準に係る届出書 | 届出時(初回・変更時) |
| 様式95 | 届出書添付書類(賃金改善計画含む) | 届出時(初回・変更時) |
| 様式100 | 賃金改善実績報告書・中間報告書 | 毎年8月(中間)・翌年2月(実績) |
令和8年度(2026年度)の重要ポイント
外来・在宅ベースアップ評価料(I)のみを届け出る場合は、賃金改善計画書の作成は不要です。別添2と様式95の提出だけで算定できます。評価料(II)または入院ベースアップ評価料を届け出る場合は、従来通り賃金改善計画書が必要です。
届出の流れと必要書類
ベースアップ評価料の施設基準届出は、以下の流れで進めます。
施設名・所在地・開設者名・届出年月日・届出内容(ベースアップ評価料の区分)を記入します。
ベースアップ評価料による見込収入額、賃金改善の対象職種・人数・改善額を記入します。ここが最も差し戻しが多い箇所です。
作成したExcelファイルを、管轄の地方厚生(支)局の指定メールアドレスへ送付します。提出期限は算定開始月の前月末(例: 6月から算定なら5月末)です。
別添2の記入方法
別添2は「特掲診療料の施設基準に係る届出書」です。以下の項目を正確に記入します。
| 項目 | 記入内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 医療機関コード | 10桁の医療機関コード | 都道府県番号2桁+機関コード7桁+チェックディジット1桁 |
| 医療機関名 | 正式名称(開設許可証のとおり) | 略称不可 |
| 開設者名 | 個人名または法人名 | 管理者名ではない。開設者名を正確に |
| 届出の区分 | 該当する評価料に◯ | 医科・歯科・調剤・訪問看護を正しく選択 |
| 届出年月日 | 届出を提出する日付 | 算定開始希望月の前月末まで |
様式95の記入方法(最重要)
様式95は、ベースアップ評価料による月額の見込収入額と、それをどの職種にいくら配分するかを記入します。ここが不備で差し戻しになるケースが最も多いため、慎重に記入しましょう。
見込収入額の計算
ベースアップ評価料の見込収入は、以下の計算式で算出します。
月額見込収入 = 1日あたりの平均患者数 × 診療日数 × 点数単価 × 10円
※点数単価は令和8年度の点数を使用(医科初診: 17点、再診: 4点)
| 算定例(1日100人のクリニック) | 計算 | 月額 |
|---|---|---|
| 初診 1日20人 × 17点 | 20人 × 25日 × 17点 × 10円 | 85,000円 |
| 再診 1日80人 × 4点 | 80人 × 25日 × 4点 × 10円 | 80,000円 |
| 月額見込収入 合計 | 165,000円 |
※注: 上記は外来・在宅ベースアップ評価料(I)の医科初診・再診のみの簡易試算です。
職種別の配分記入例
見込収入165,000円を、スタッフの職種別に配分します。以下は5名のクリニックの記入例です。
| 職種 | 人数 | 月額改善額(1人あたり) | 月額合計 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 医師 | 1名 | 50,000円 | 50,000円 | 基本給に上乗せ |
| 看護師(正職員) | 2名 | 25,000円 | 50,000円 | 基本給に上乗せ |
| 医療事務(正職員) | 1名 | 20,000円 | 20,000円 | 基本給に上乗せ |
| パート看護師 | 2名 | 15,000円 | 30,000円 | 時給換算で上乗せ |
| パート医療事務 | 1名 | 15,000円 | 15,000円 | 時給換算で上乗せ |
| 合計 | 7名 | 165,000円 | 見込収入と一致させる |
重要なポイント: ①配分額の合計が見込収入額を超えていないこと ②改善額が合理的な範囲であること(1人に偏りすぎない) ③パート職員には、時給換算でいくら上がるかを明記すると差し戻しリスクが下がります。
パートスタッフの配分(差し戻し最多ポイント)
パートスタッフの賃金改善は、特に差し戻しが多い項目です。以下のように、時給換算と月額をセットで記入しましょう。
| パート種別 | 月額改善額 | 月間勤務時間 | 時給改善額 |
|---|---|---|---|
| 扶養内パート(月80時間) | 15,000円 | 80h | 約188円UP |
| 社保加入パート(月130時間) | 20,000円 | 130h | 約154円UP |
パート配分のコツ
パート職員の賃金改善は「時給◯◯円の引き上げ」と明記すると、厚生局の審査で通りやすくなります。扶養内パート(月80時間)と社保加入パート(月130時間)で改善額を分けて記入するのがベストプラクティスです。
よくある差し戻し事例と対策
厚生局の審査で実際に多い差し戻し理由と、その対策をまとめました。
| 差し戻し理由 | よくある原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 配分額が収入見込を超過 | 計算ミス | Excelで自動計算し、合計が一致するか確認 |
| パート職員の改善額が不明確 | 時給換算なし | 時給◯◯円UPと明記 |
| 届出年月日が不適切 | 月末ギリギリ | 前月20日までに提出を推奨 |
| 職種が「その他」で括られている | 職種の細分化不足 | 医師・看護師・事務・パート等に分けて記入 |
| 様式が古い | 前年度の様式を使用 | 必ず厚労省サイトから最新版をDL |
| 賃金改善の実績がない | 前年度の報告書未提出 | 実績報告書(様式100)も忘れずに提出 |
記入前チェックリスト
提出前に、以下の項目を必ず確認しましょう。
- 最新の様式(令和8年度版)を使用しているか
- 医療機関コード・開設者名が正確か
- 見込収入額の計算が正しいか(初診17点・再診4点で計算)
- 配分額の合計が見込収入額と一致しているか
- すべての職種をカバーしているか(「その他」で括っていないか)
- パート職員の改善額を時給換算で明記しているか
- 提出期限(算定開始月の前月末)を守っているか
- 管轄の地方厚生(支)局の正しいメールアドレスに送っているか
提出後の流れ
届出が受理されると、指定された月からベースアップ評価料の算定が可能になります。その後も、以下の報告書提出が必要です。
| 報告書 | 提出時期 | 内容 |
|---|---|---|
| 中間報告書(様式100) | 毎年8月 | 4〜6月の賃金改善実績 |
| 実績報告書(様式100) | 毎年2月 | 年間の賃金改善実績 |
これらの報告書も様式95と同様に正確に記入する必要があります。不備があると、翌年度の届出に影響する可能性があるため注意しましょう。
ベア評価料の届出・報告は勤怠管理がカギ
賃金改善計画書や実績報告書を正確に作成するには、スタッフごとの勤務実績と改善額の紐付けが欠かせません。とくにパート職員の場合、月ごとの勤務時間に応じて改善額を按分する必要があり、手作業ではミスが起きやすい領域です。
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