クリニックの年末調整は、一般企業と異なる医療従事者特有のポイントがいくつもあります。非常勤医師の源泉徴収判断、当直・オンコール手当の扱い、ベースアップ評価料の賃金改善額の反映など、見落としやすい項目も少なくありません。
この記事では、クリニック経営者・事務長向けに、2026年分の年末調整の手続きをスケジュール・必要書類・控除額・職種別の注意点まで含めて完全解説します。
年末調整のスケジュール
| 時期 | やること |
|---|---|
| 10月〜11月 | 翌年分の扶養控除等申告書を配布・回収 |
| 11月中旬 | 保険料控除申告書・配偶者特別控除申告書を配布 |
| 11月下旬 | 各種申告書の回収・内容確認 |
| 12月 | 年末調整計算(最終給与・賞与支給時) |
| 翌年1月31日 | 源泉徴収票を市区町村・税務署へ提出、スタッフへ交付 |
2026年分の主な控除額
| 控除項目 | 金額(年間) |
|---|---|
| 基礎控除 | 48万円(合計所得2,400万円以下) |
| 配偶者控除(一般) | 38万円 |
| 扶養控除(一般) | 38万円(16歳以上19歳未満) |
| 社会保険料控除 | 全額(健康保険・厚生年金・雇用保険等の実支払額) |
| 生命保険料控除 | 最大12万円(一般・個人年金・介護医療の合計) |
| 地震保険料控除 | 最大5万円 |
クリニック特有の注意点
1. 非常勤医師の源泉徴収判断
非常勤医師(週1〜2回の外来担当など)について、雇用契約か業務委託かで源泉徴収の要否が変わります。
- 雇用契約(給与所得): 年末調整の対象。給与から源泉徴収し、年末調整で精算
- 業務委託(事業所得・雑所得): 源泉徴収義務あり(報酬額により10.21%または20.42%)だが、年末調整の対象外。支払調書を翌年1月31日までに税務署へ提出
判断基準: 勤務時間・場所の拘束がある→雇用契約。自由診療枠のみ、器材持参→業務委託。グレーゾーンは税理士・社労士に確認を。
2. 当直・オンコール手当の扱い
医師・看護師の当直手当・オンコール手当は給与所得として年末調整の対象です。ただし、待機時間が完全に自由(外出可・飲酒可)な場合は非課税となるケースもあります。
3. ベースアップ評価料による賃金改善額の反映
2026年6月からベースアップ評価料による賃金改善を実施しているクリニックでは、改善額が給与に上乗せされているかを年末調整時に確認します。賃金改善計画書の改善額と実際の支給額に差異がないか、賃金台帳と照合しましょう。
4. 医師国保と社会保険の違い
開業医が医師国保(国民健康保険組合)に加入している場合、社会保険料控除の計算方法が一般の健康保険と異なります。医師国保の保険料は全額社会保険料控除の対象ですが、組合によって保険料の算定基準が異なるため、年間支払額を正確に把握しておく必要があります。
スタッフ種別ごとのチェックポイント
常勤医師・正職員
- 扶養控除等申告書の提出確認(異動の有無)
- 保険料控除申告書(生命保険・地震保険等)の回収
- 住宅ローン控除の適用有無(2年目以降は年末調整で対応可)
- ベア評価料による賃金改善額が給与に反映されているか
パートスタッフ
- 年収103万円以下(扶養内)→ 基礎控除のみで所得税ゼロ。年末調整の手続きは簡略
- 年収103万円超130万円未満 → 配偶者特別控除の対象となる場合あり。配偶者の勤務先への申告が必要
- 年収130万円以上 → 社会保険加入となり、社会保険料控除の対象。年末調整で精算
非常勤医師(雇用契約)
- メインの勤務先で年末調整を受けている場合、副業先(クリニック)では乙欄適用(源泉徴収のみ・年末調整なし)
- クリニックがメインの勤務先の場合、通常の年末調整を実施
必要書類一覧
| 書類名 | 対象者 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 扶養控除等(異動)申告書 | 全スタッフ | 翌年1月の最終給与支給日の前日 |
| 保険料控除申告書 | 控除希望者 | 年末調整時 |
| 配偶者特別控除申告書 | 対象者のみ | 年末調整時 |
| 源泉徴収票 | スタッフへ交付 | 翌年1月31日 |
| 法定調書合計表 | 税務署へ提出 | 翌年1月31日 |
年末調整のチェックリスト
- 全スタッフの扶養控除等申告書を回収したか
- 保険料控除申告書(生命保険・地震保険等)を回収したか
- 非常勤医師の雇用形態(雇用契約/業務委託)を確認したか
- パートスタッフの年収が扶養範囲内か確認したか
- ベア評価料の賃金改善額が給与に正しく反映されているか
- 源泉徴収票の作成・交付準備ができているか(1月31日期限)
- 法定調書合計表の提出準備ができているか
- eLTAX(地方税ポータル)での給与支払報告書提出準備ができているか
勤怠データと年末調整の連携でミスを防ぐ
年末調整の正確さは、年間の給与・勤怠データの正確さに直結します。とくにパートスタッフの勤務時間変動や、非常勤医師の支払額集計は、手作業ではミスが起こりやすい領域です。
Medical Attend は、勤怠データを自動集計し、年間の給与支給額レポート、パートスタッフの年収アラート、源泉徴収票の作成に必要なデータ出力を提供します。
