ドイツの病院、66%が赤字——「日本の近未来」かもしれない話
最低賃金が上がり続ける、この感覚
年に一度、最低賃金が上がる。そのたびに「また人件費が増える」と思いながら、診療報酬は国が決めるから売上は動かせない。
日本のクリニックを経営する人なら、誰もが感じているこの板挟み。実はこれ、ドイツの医療現場でまったく同じことが起きています。日本より2年ほど早く。
ドイツ病院、66%が赤字。黒字は14%だけ
数字を見てみましょう。
ドイツ病院協会(DKG)の調査によると、2024年のドイツの病院のうち66%が赤字でした。2025年はさらに悪化し、約70%が赤字になる見通しです。黒字の病院は23%から14%に半減しました。
病院の手元資金は平均で6週間分しかありません(DKG経済指標、2026年6月)。倒産保護を申請した病院は2024年だけで47件、約4,800床が消えました。2020年以降の累計では101病院が閉鎖し、12,456床が失われています。
なぜこんなことになっているのか。理由はシンプルです。
人件費は+8.4%、売上は固定——日本とまったく同じ構造
ドイツの法定最低賃金は、2026年1月に€13.90へと+8.4%引き上げられ、2027年にはさらに+5%の€14.60になる予定です。
医療現場で働く介護職も例外ではありません。看護師の最低賃金は2026年7月から€18.70〜€21.03。2027年7月には€21.58まで上がります。日本円で時給3,500円近くです。
一方で、ドイツの診療報酬も日本と同じく公定価格。病院は売上を自分で決められない。なのに人件費だけは法律で上がり続ける。
この構造、日本のクリニック経営者なら「それ、うちと同じだ」と思うのではないでしょうか。
ドイツの開業医は叫んでいる——#medizinbrennt
数字だけでなく、現場の声に耳を傾けてみます。
ドイツの開業医@DocGlitz氏(大規模家庭医診療所を経営)が、Xにこう投稿しています(2026年7月11日、38,000以上のインプレッション)。
「2027年から何が変わるか? 臓器移植相談が予算枠内に戻され、自由診療時間も枠内に。衛生割増は廃止。患者を多く診れば固定費逓減控除がかかる。私の診療所では年間最大6万ユーロ(約960万円)の減収になる」
さらにこう続けます。
「これは警告だ。数十億ユーロが外来医療から消えようとしている。2027年、多くの診療所が『診療を続ける意味があるのか』と計算し始める瞬間が来る。#medizinbrennt(医療が燃えている)」
このハッシュタグは、いまドイツの医療従事者たちの間でリアルタイムに拡散しています。医学生の@C_Chemnitz氏も「医療が崩壊している。#medizinbrennt は日々大きくなっている」と。
38年目の看護師が語る「失われた2分間」
制度や数字だけでは伝わらないものがあります。現場で何が起きているのか。
ZEIT紙がインタビューした看護師のルート・ファングマンさん(56歳)は、同じ病院で38年間働いてきました。
「患者は12号室の盲腸ではない。患者は物語を持ち、不安を持ち、尊厳を持った人間だ」
「経済的圧力の中で、あと2分ベッドのそばにいることを選ぶのか。質問に答えるのか。苦しむ人に耳を傾けるのか。経済的に何も生まなくても、私は聴くのか」
「私たちのような病院が経済的圧力で消えてしまうかもしれない。それは本当に怖い。私たちは姿勢を失い、人間性を失い、医療システムの魂さえも失うだろう」
さらに、FOCUS誌が伝えた話があります。
40歳の集中治療看護師クラウゼ氏。ある夜勤で、末期癌の患者が敗血症で急変しました。しかし看護師の配置は1人で患者3人。手が回らず、患者は一人で亡くなりました。
人手不足が人を殺す——現場で起きていることは、まさにこれです。
これは「日本の近未来」かもしれない
日本の最低賃金も毎年上がり続けています。2026年10月には社会保険の適用拡大で、パートさんの「週20時間の壁」が新たな基準になります。クリニックの人件費はこれから確実に増えていきます。
でも、診療報酬は国が決める公定価格。売上は自分で上げられない。
ドイツで起きていることは、日本のクリニックの数年後を先取りしているように見えませんか。
「でも、ドイツは病院の話でしょ」と思うかもしれません。しかしドイツで叫ばれている「人件費上昇×売上固定」の板挟みは、規模の大小に関係なく、日本のクリニックにもそのまま当てはまります。
では、どうすればいいのか
ドイツの例が教えてくれるのは、「待っているだけでは悪化する一方だ」ということです。
診療報酬は自分で変えられない。最低賃金の上昇も止められない。でも、現場の運用を効率化することはできます。
紙のタイムカードをやめてシフトの見える化をするだけでも、どこに無駄な人件費がかかっているかがわかります。「週20時間の壁」が近づいているスタッフを事前に把握できれば、年末に慌てて社保の調整をする必要もなくなります。
Medical Attendも、こうした思いから生まれました。国の制度は変わる。でも現場の運用は自分たちでなんとかするしかない。
ドイツの66%の病院が赤字になる前に、私たちは手を打てるのでしょうか。#medizinbrennt が日本で「#医療が燃えている」と訳される日が来る前に。
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