看護師や医療事務は女性スタッフが多く、クリニックでは産休・育休への対応が欠かせません。「スタッフから妊娠の報告があったとき、何を準備すればいいのか」という不安を持つ経営者も多いでしょう。
この記事では、産前産後休業・育児休業・出生時育児休業の制度と手続き、クリニックでの両立支援のポイントを解説します。
産前産後休業(産休)
産前産後休業は、労働基準法で定められた休業です。
- 産前休業:出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から申し出により取得可能
- 産後休業:出産後8週間(原則として就業禁止。本人が希望し医師が認めた場合は6週間後に就業可)
産前産後休業中は、健康保険から出産手当金が支給されます(加入している健康保険等の運営機関が窓口)。
育児休業(育休)
育児休業は、原則1歳未満の子を養育する労働者が取得できます。現在は2回まで分割して取得できます(厚生労働省)。
育児休業を取得できるのは、次の要件を満たす場合です。
- 1歳未満の子を養育している
- 育児休業申出時点で、雇用されている期間が1年以上(※)
- 育児休業開始予定日から起算して1年6ヶ月を経過する日までに、労働契約の期間が満了することが明らかでない
※パート・有期雇用労働者は、引き続き雇用された期間が1年以上で、子が1歳6ヶ月に達する日までに労働契約が満了しないことが要件です。
出生時育児休業(産後パパ育休)
出生時育児休業(産後パパ育休)は、子の出生後8週間以内の期間に、合計4週間(28日)を限度として取得できる休業です(厚生労働省)。2回まで分割して取得できます。
出生時育児休業の取得者は、出生時育児休業給付金(給付率67%)の支給対象になります。
育児休業給付金と支援給付金
育児休業中は、ハローワークから育児休業給付金が支給されます。主な内容は次のとおりです(厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」)。
- 育児休業給付金:休業開始から180日間は給付率67%、それ以降は50%(休業開始時賃金に対する割合)
- 出生時育児休業給付金:給付率67%
- 出生後休業支援給付金:出生時育児休業給付金または育児休業給付金を受給する人が一定の要件を満たした場合に上乗せ(2025年4月創設。両親とも休業する場合などに、あわせて給付率80%=手取り10割相当)
- 育児時短就業給付金:育児のための時短勤務をしている人への給付(2025年4月創設)
また、育児休業中は健康保険・厚生年金保険料が免除されます(申出による)。
クリニックでの両立支援のポイント
代替要員の確保とシフト調整
休業期間中の人員不足に備え、採用計画やシフト調整を早めに立てましょう。休業開始が決まったら、業務の引き継ぎとマニュアル整備を進めます。シフト管理の効率化はクリニックのシフトパターン別・最適な勤務割りの組み方を参考にしてください。
復職支援と時短勤務
復職後の勤務時間(時短勤務・シフト制限)を事前に相談し、就業規則に柔軟な働き方の制度を用意しておくと、休業からの復帰率が高まります。
制度の周知と手続きの案内
産休・育休の制度や申請方法を、就業規則や社内マニュアルで周知しましょう。手続きの全体像はクリニックの社会保険・労働保険手続きガイドも参考になります。
休業までの手続きスケジュール
スタッフから妊娠の報告があったら、次のようなスケジュールで準備を進めましょう。
- 妊娠の報告:出産予定日・休業開始予定日・復職希望時期を確認
- 産前休業前:産前休業の申出を受け、代替要員の計画・業務の引き継ぎを開始
- 出産後:産後休業・育児休業の申出を受け、給付金の手続きを案内
- 復職前:復職日・勤務条件(時短勤務など)を相談し、シフトに反映
育児休業給付金などの手続きはハローワークで行うため、必要書類の案内を早めに渡しましょう。
就業規則への反映
産休・育休の制度は、就業規則に次の内容を定めておくことが大切です。
- 産前産後休業・育児休業・出生時育児休業の取得条件と期間
- 休業中の賃金・手当の扱い
- 復職後の勤務時間・時短勤務の制度
- 休業中の連絡方法(状況報告の頻度など)
制度を文書化しておくと、スタッフが安心して申し出やすくなり、運用のトラブルも防げます。
パート・非常勤の産休・育休の注意点
クリニックではパート・非常勤のスタッフも多く、産休・育休の対象になるケースがあります。注意点は次のとおりです。
- 産前産後休業:雇用形態にかかわらず、労働者であれば取得できます(産前は申出による)
- 育児休業:パート・有期雇用労働者も、引き続き雇用された期間が1年以上などの要件を満たせば取得できます
- 時短勤務:3歳未満の子を養育する労働者は、就業規則で定める場合、時短勤務を利用できます
パートの勤務時間が週20時間以上で社会保険に加入している場合は、育児休業中の保険料免除などの手続きも対象になります。
よくある質問
育児休業はパートでも取得できる?
パート・有期雇用労働者でも、一定の要件(引き続き雇用された期間が1年以上など)を満たせば取得できます。
休業中の社会保険料はどうなる?
育児休業中は、申出により健康保険・厚生年金保険料が免除されます。雇用保険(育児休業給付金)の手続きはハローワークで行います。
復職後の時短勤務は認められる?
3歳に満たない子を養育する労働者は、原則として所定労働時間の短縮措置(時短勤務)を利用できます。制度を就業規則に定めておきましょう。
休業中の給与はどうなる?
休業中の給与は、就業規則の定めによります(無給とする運用が一般的)。育児休業給付金や出産手当金などの公的給付で生活を支える仕組みです。
育児休業給付金の申請は誰がする?
申請は原則として休業者本人がハローワークで行います。事業主は「育児休業給付金支給申請書」の事業主記載欄への記入や、雇用保険の被保険者情報の確認に協力します。
産休・育休と有給休暇の関係は?
産前産後休業・育児休業と年次有給休暇は別の制度です。休業開始前に有給休暇を消化する運用も可能ですが、計画的付与のルール(クリニックの有給管理)に沿って運用しましょう。
休業中の代替要員をどう確保する?
パートの追加募集や、業務の再配分、外部サービスの活用など、早めに選択肢を検討しましょう。休業期間が分かった時点で採用計画に反映するのがポイントです。
多胎妊娠の場合は?
多胎妊娠の場合は、産前休業を出産予定日の14週間前から取得できます。通常の6週間前とは異なる点に注意しましょう。
まとめ
産休・育休は、スタッフのライフイベントに合わせて制度を正しく運用することで、職場の定着につながります。産前産後休業・育児休業・出生時育児休業の要件と給付(育児休業給付金・出生後休業支援給付金など)を理解し、就業規則へ反映し、代替要員の確保・引き継ぎ・復職支援までを計画的に進めましょう。休業者の管理と残りのスタッフのシフト調整は、勤怠データとあわせて管理すると負担を減らせます。
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