医療事務は、レセプトの締めや会計処理など月末に業務が集中しやすく、残業が発生しやすい職種です。残業が続くとスタッフの負担が増えるだけでなく、人件費の増加や離職のリスクにもつながります。
この記事では、医療事務の残業が発生する要因と、具体的な削減策を解説します。
残業が発生しやすい業務
医療事務の残業は、次のような業務に集中しがちです。
- レセプトの点検・提出:月末〜月初の請求業務。点検作業が手作業に依存していると時間がかかる
- 会計の締め処理:日次・月次の売上集計や現金管理
- 電話対応・患者対応:診療時間中の割り込み業務が後回しにされ、定時後に回る
- 書類作成・データ入力:診療報酬請求に関わる各種書類や手作業の入力
まずは、誰が・どの業務に・どれだけの時間を使っているかを勤怠データと業務記録で可視化することが、削減の第一歩です。
残業を減らす具体的な方法
レセプト点検のフローを見直す
レセプト点検は、手作業の見直しだけで残業が大きく減るケースがあります。レセコンに備わっている点検・チェック機能を活用し、エラーの自動検出や帳票の一括出力を取り入れると、点検時間を短縮できます。実例では、点検フローを見直してレセプト残業と派遣費用(約60万円)を不要にできたという報告もあります(医事ラボ)。
請求業務を前倒し・分散する
月末に集中する業務を、可能な範囲で前倒しして分散させましょう。たとえば、日次でレセプトの基礎データを確認する、週次で点検を進めるなど、締め日直前の集中を避ける運用に変えます。
業務分担とマニュアルを整える
特定のスタッフに業務が偏ると、その人の残業が増えます。業務分担表とマニュアルを整備し、複数人で対応できる体制を作りましょう。業務の標準化は医療事務の業務効率化ガイドも参考にしてください。
外部委託・システム化を検討する
レセプト点検の外部委託や、チェックソフト・医療事務代行サービスを活用する選択肢もあります。費用対効果を試算し、繁忙期だけ委託する方法も検討しましょう。
業務別の削減アイデア
- 電話対応:よくある質問をマニュアル化し、転電のルールを決める。予約・問い合わせの自動応答(チャットボット)も検討する
- 会計・精算:キャッシュレス決済の導入や、会計業務の分担を明確にして、締め処理の時間を短縮する
- 書類作成:定型書類のテンプレート化、電子化(電子カルテ・帳票の自動出力)を進める
- データ入力:レセコン・電子カルテとの連携で、手入力を減らす
キャッシュレス決済の導入はクリニックのキャッシュレス決済導入で解説しています。
残業が多い職場のチェックリスト
次の項目に当てはまる場合は、残業の構造的な原因があります。
- レセプト点検が特定の1〜2人に集中している
- 月末の請求業務が毎月残業になる
- 業務マニュアルがなく、対応できる人が限られている
- レセコンの点検・チェック機能を活用していない
- 残業の実態が勤怠データで把握されていない
当てはまる項目があれば、上記の削減策を優先的に実施しましょう。
時間外労働の適正な管理
残業を減らすと同時に、時間外労働を法令の範囲内に収めることも重要です。時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間(特別条項付き36協定を結ぶ場合は年720時間など)とされています。
医療機関では診療の性質上、時間外労働が発生しやすいですが、次の管理が求められます。
- 36協定の締結と届出:時間外労働を行うには36協定が必要(クリニックの36協定は36協定の書き方を参照)
- 勤怠データでの実績把握:月ごとの残業時間をスタッフ別に集計し、上限超過を早期に検知する
- 長時間労働者への対応:月80時間を超える残業がある場合は、医師による面接指導などが必要になる場合がある
残業の削減は、労働時間の適正管理とセットで進めましょう。
改善事例から学ぶポイント
医療機関での残業削減の実践例では、次のような取り組みが効果を上げています。
- レセプト点検フローの再設計:レセコンの機能を活用し、点検の自動化と省略できる作業の洗い出しを行った(医事ラボの事例では、点検フロー見直しで残業と派遣費用が不要になったと報告)
- 業務の見える化:誰がどの業務に時間を使っているかを可視化し、担当の偏りを是正した
- 締め業務の前倒し:日次・週次の点検を習慣化し、月末の集中を解消した
成功のポイントは、「残業を我慢して頑張る」のではなく「業務の作り方を見直す」ことです。スタッフの協力を得ながら、少しずつ改善を積み重ねましょう。
残業削減を進める手順
- 現状把握:勤怠データでスタッフ別・業務別の残業時間を集計する
- 原因特定:残業が多い業務と、その理由(手作業・締めの集中・属人化)を整理する
- 改善策の実施:レセコン機能の活用、業務の前倒し、分担の見直しなどから着手する
- 効果測定:1〜2ヶ月後に残業時間の変化を確認し、改善策を調整する
レセプトの返戻・再請求の対応も、残業の原因になりがちです。対応方法はレセプトの返戻・再請求の記事で解説しています。
よくある質問
残業時間はどれくらいが目安?
クリニックに特化した公式の目安はありません。法定の上限(原則月45時間・年360時間)を守ることは当然として、業務量と人員配置のバランスを見直しましょう。
残業代を支払っていれば問題ない?
残業代の支払いがあっても、恒常的な残業はスタッフの疲労や離職につながります。時間外労働の実態を把握し、業務そのものの削減を進めることが大切です。
改善策が続かない場合は?
現場任せにせず、定期的なミーティングで残業時間を確認し、改善策の効果を振り返る仕組みを作りましょう。業務量に対して人員が足りない場合は、採用や業務委託の検討も必要です。
残業が多いのは人員不足が原因?
人員不足だけでなく、業務フローやシステム活用の不足が原因の場合も多いです。まずは業務を見直し、それでも改善しない部分に対して人員配置を検討しましょう。
レセプト代行に頼りすぎるのは問題?
代行サービスの利用自体は問題ありませんが、請求内容を確認できる体制(院内での責任者・点検者)は残しておきましょう。丸投げにすると返戻対応に時間がかかることがあります。
残業ゼロを目指すべき?
診療の性質上、どうしても発生する残業はあります。目標は「恒常的・構造的な残業をなくす」ことです。突発的な対応は残る前提で、人員配置と業務設計を見直しましょう。
残業時間の集計は誰が担当する?
勤怠システムで自動集計し、月次で責任者が確認する体制にしましょう。手作業での集計はミスと手間の原因になります。
まとめ
医療事務の残業は、レセプト点検の手作業や月末の業務集中が主な原因です。勤怠データで残業の実態を可視化し、レセコン機能の活用・業務の前倒し・分担の見直し・外部委託の検討という順で改善を進めましょう。時間外労働の上限(原則月45時間・年360時間)も意識しながら、恒常的な残業を減らすことが重要です。残業時間の削減は、人件費の削減とスタッフの定着の両方につながります。
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