賞与を支給するとき、社会保険料の控除額をどう計算すればいいか迷ったことはありませんか。賞与の社会保険料は「標準賞与額」に保険料率を掛けて計算する仕組みです。
この記事では、標準賞与額の計算方法・上限額・保険料率・具体的な計算例を、日本年金機構の公表内容に基づいて解説します。
賞与から控除される社会保険料の種類
賞与からは、毎月の給与と同じく次の社会保険料が控除されます。
- 健康保険料(事業主と折半)
- 厚生年金保険料(事業主と折半)
- 介護保険料(40歳以上65歳未満の方)
- 雇用保険料(労働者負担分)
このうち健康保険料と厚生年金保険料は労使折半、雇用保険料は事業主にも負担があります。給与計算のミスを防ぐための全体像はクリニックの給与計算7大ミスと防止策でも紹介しています。
標準賞与額の計算
日本年金機構によると、賞与にかかる保険料は、実際に支払われた賞与額(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」とし、その標準賞与額に保険料率を掛けて計算します。
- 賞与300,000円 → 標準賞与額 300,000円
- 賞与300,400円 → 標準賞与額 300,000円
- 賞与299,900円 → 標準賞与額 299,000円
保険料率
厚生年金保険料率は18.3%で固定
厚生年金保険の保険料率は、平成29年9月を最後に引き上げが終了し、18.3%で固定されています(日本年金機構)。事業主と被保険者が折半するため、被保険者負担は9.15%です。
健康保険料率は都道府県・年度ごとに異なる
健康保険料率は年度と都道府県によって異なります。協会けんぽの令和8年度の保険料率の例は次のとおりです。
| 都道府県 | 令和8年度 健康保険料率 |
|---|---|
| 東京都 | 9.85% |
| 北海道 | 10.28% |
※保険料率は労使合わせた料率で、事業主と被保険者が折半します。最新の料率は協会けんぽのホームページで確認してください。介護保険料率(40〜64歳)や雇用保険料率も年度ごとに確認が必要です。
介護保険料(40歳以上65歳未満)
40歳以上65歳未満の被保険者には、健康保険料に加えて介護保険料が上乗せされます。介護保険料率も都道府県ごとに異なり、年度ごとに改定されます。労使折半で負担する点は健康保険料と同じです。
雇用保険料
賞与にも雇用保険料がかかります。雇用保険料率は毎年度、厚生労働省が告示で定めます。労働者負担分は賞与から控除し、事業主負担分は事業主が負担します。最新の料率は厚生労働省の告示で確認してください。
標準賞与額の上限
標準賞与額には上限が設定されています。
- 健康保険:年度の累計額573万円(年度は毎年4月1日から翌年3月31日まで)
- 厚生年金保険:1ヶ月あたり150万円(同月内に2回以上支給する場合は合算して上限を適用)
たとえば、6月に100万円と60万円の賞与を2回支給した場合、厚生年金の標準賞与額は合算した160万円ではなく、上限の150万円で計算します。
2回に分けて支給する場合の計算例
夏と冬に賞与を支給するクリニックも多いでしょう。たとえば、6月に100万円、12月に100万円を支給し、東京都・40歳未満の場合、それぞれの月で次のように計算します。
- 健康保険料:100万円 × 9.85% = 98,500円(各月)
- 厚生年金保険料:100万円 × 18.3% = 183,000円(各月)
厚生年金は1ヶ月単位で上限を判定するため、100万円ずつの支給ならどちらも上限(150万円)以内です。健康保険は年度累計573万円が上限で、夏冬合計200万円なら問題ありません。
計算例(賞与30万円・東京都・40歳未満)
賞与300,000円(標準賞与額300,000円)、東京都・40歳未満の方の例で計算してみます。
健康保険料
300,000円 × 9.85% = 29,550円(労使折半:14,775円ずつ)
厚生年金保険料
300,000円 × 18.3% = 54,900円(労使折半:27,450円ずつ)
労使合計
29,550円 + 54,900円 = 84,450円(被保険者負担 42,225円)
40歳以上65歳未満の方は、これに加えて介護保険料が控除されます。たとえば介護保険料率が1.6%の場合、300,000円 × 1.6% = 4,800円(労使折半で2,400円ずつ)が加わります。雇用保険料も労働者負担分が控除されるため、実際の手取りはさらに減ります。
端数処理の考え方
標準賞与額は1,000円未満を切り捨てます。たとえば賞与300,999円でも標準賞与額は300,000円です。切り捨てるのは賞与額だけで、保険料そのものの端数処理(円未満の扱い)は、事業主ごとの事務処理方法に従います。
納付と事務手続き
賞与の社会保険料は、給与分とあわせて事業主が納付します。また、賞与を支給した際は、被保険者賞与支払届を管轄の年金事務所へ提出する必要があります。提出期限や電子申請の方法は、日本年金機構の案内に従ってください。
支給時の事務フローはおおむね次のとおりです。
- 賞与額を確定し、標準賞与額を計算する(1,000円未満切り捨て)
- 保険料率を確認し、健康保険・厚生年金(・介護)・雇用保険の控除額を計算する
- 被保険者賞与支払届を作成し、管轄の年金事務所へ提出する
- 給与明細に控除額を記載し、賞与を支給する
- 社会保険料を給与分とあわせて納付する
年末の賞与や年末調整の全体像はクリニックの年末調整完全ガイドもあわせてご覧ください。
よくある質問
賞与を年4回以上支給する場合は?
年4回以上支給される賞与は、標準報酬月額の対象となる報酬に含まれます(日本年金機構)。月例の給与として扱われる点に注意が必要です。
賞与が150万円を超える場合は?
厚生年金保険の標準賞与額は1ヶ月あたり150万円が上限です。150万円を超える部分には厚生年金保険料がかかりません。健康保険は年度累計573万円が上限です。
賞与が1,000円未満の場合は?
標準賞与額は1,000円未満を切り捨てるため、1,000円未満の賞与の標準賞与額は0円となり、健康保険・厚生年金の保険料は発生しません。
賞与を支給しない月に保険料は発生する?
賞与の社会保険料は支給月に発生します。支給しない月は、賞与分の保険料は控除・納付の対象になりません。
保険料率はどこで確認すればいい?
健康保険料率は協会けんぽのホームページ、厚生年金保険料率は日本年金機構のホームページで確認できます。年度更新があるため、賞与の支給時期が近づいたら最新の料率を確認する習慣をつけましょう。
賞与からはどの保険料が控除されない?
社会保険(健康保険・厚生年金・介護)と雇用保険は控除対象です。所得税も源泉徴収されます。
まとめ
賞与の社会保険料は、総支給額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に保険料率を掛けて計算します。厚生年金は18.3%、健康保険は都道府県別の料率を確認し、上限(健保573万円・厚年150万円)にも注意しましょう。毎回の計算を正確に行うには、基礎となる勤怠データの管理と、料率の年度更新を忘れないことが重要です。
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