看護師の退職金はいくらくらいなのか、勤続年数によってどう変わるのか。クリニックの経営者・事務長が退職金制度を考えるとき、まず把握しておきたいのが「相場」と「計算の仕組み」です。
この記事では、看護師の退職金の相場の考え方、退職金の計算方法、税金(退職所得控除)の仕組みを解説します。
看護師の退職金の相場
看護師の退職金の相場は、勤務する施設の種類や勤続年数によって大きく異なります。病院とクリニック、正職員とパートでは制度自体が異なることが一般的です。
なお、看護師の退職金について公的な統計はなく、転職サイトなどが独自に公表する目安は勤続年数10年で100万円〜200万円台など、サイトによって差があります。正確な「相場」は存在せず、あくまで参考値として扱ってください(本記事では未確認のため具体的な金額は明示しません)。
自院の制度を設計する際は、同規模のクリニックや地域の水準を参考にしつつ、就業規則・退職金規程で明確に定めることが重要です。
退職金の計算方法(よくある算定式)
退職金の支給額は、各施設の退職金規程で決まります。代表的な算定方式は次のとおりです。
- 定額方式:勤続年数に応じて一定額(例:基本給×勤続年数×係数)
- ポイント制:職種・等級・勤続年数などに応じてポイントを付与し、ポイント単価を掛ける
- 中退共(中小企業退職金共済):掛金の積立額に応じて支給
いずれの場合も、勤続年数の計算方法(端数の扱い・パートの換算)を規程で決めておくことがトラブル防止につながります。
中退共を利用した場合の計算
中小企業退職金共済(中退共)を利用している場合は、掛金の積立額がそのまま退職金として支給されます。掛金月額は5,000円〜30,000円の範囲で選択でき、退職時に積立額の範囲で支給されるため、事前に退職金の概算を従業員へ示しやすいのが特徴です。制度の詳細はクリニックの退職金制度【種類・作り方・中退共の活用】で解説しています。
退職金の原資づくり
退職金を確実に支給するには、財源を事前に準備しておくことが欠かせません。主な方法は次のとおりです。
- 中退共:掛金を国が運営する共済に積み立てる(法人は損金・個人事業主は必要経費)
- 生命保険:法人契約の養老保険などで計画的に積み立てる
- 社内積立:退職給与引当のための資金を別勘定で管理する
いずれも税務上の取り扱いが異なるため、顧問税理士に相談しながら選ぶのが確実です。
退職金にかかる税金(退職所得の計算)
退職金は「退職所得」として、他の所得と分離して課税されます。国税庁によると、退職所得は原則として次の計算式で求めます。
退職所得控除額は、勤続年数に応じて次のように計算します。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) |
勤続年数に1年未満の端数がある場合は1年に切り上げます。たとえば勤続10年2ヶ月は11年として計算します。
計算例
勤続15年・退職金300万円の場合、退職所得控除額は 40万円×15年=600万円となり、退職金300万円を控除額が上回るため、退職所得は0円(所得税・住民税の課税なし)です。
勤続30年・退職金2,000万円の場合は、控除額は 800万円+70万円×10年=1,500万円、退職所得は(2,000万円−1,500万円)×1/2=250万円となり、この250万円に対して分離課税で税金がかかります。
源泉徴収と確定申告
退職金の支払い時、従業員が「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、支払者が所得税等を源泉徴収するため、原則として確定申告は不要です。ただし、医療費控除や寄附金控除などを受ける場合は、確定申告で退職所得の金額を申告します。
支払う側(医療機関)の実務としては、退職金の支給時に源泉徴収を行い、翌月の給与分とあわせて納付する流れになります。
退職時の事務手続き
退職金を支給する際は、次の流れで進めましょう。
- 退職金規程に基づいて支給額を算定する(勤続年数・在職期間を確認)
- 従業員に「退職所得の受給に関する申告書」の提出を案内する(未提出の場合は源泉徴収の計算が異なるため、必ず案内)
- 退職所得控除額を計算し、源泉徴収税額を算出する
- 退職金を支給し、給与等とあわせて源泉徴収額を納付する
退職金の支給とあわせて、有給休暇の買い取りや最終給与の精算なども発生するため、担当者は退職のタイミングに合わせてスケジュールを立てましょう。
退職所得控除の注意点
退職所得控除の計算には、いくつか注意点があります。
- 勤続年数の端数は1年に切り上げ(勤続10年2ヶ月は11年)
- 前年以前に退職金を受け取ったことがある場合や、同一年中に2か所以上から退職金を受け取る場合は、控除額の計算が異なる(国税庁)
- 障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、控除額に100万円が加算される
退職金を分割して受け取る場合や、複数の制度から受け取る場合も計算が複雑になるため、顧問税理士に確認しましょう。
クリニック経営者が押さえるべきポイント
- 退職金規程を就業規則とは別に整備し、支給基準・勤続年数の計算・パートの扱いを明文化する
- 財源を事前に確保する(中退共や生命保険など。詳しくはクリニックの退職金制度を参照)
- 退職時の手続きを給与担当・社労士と確認し、源泉徴収を漏らさない
看護師の給与水準とあわせて検討したい方は看護師の給与相場とクリニックの給与設計もご覧ください。
よくある質問
パートの看護師にも退職金は必要?
法律で退職金の支給は義務付けられていません。支給する場合は規程でパートの勤続年数・換算方法を明確に定めましょう。
退職金を支給しないと違法?
退職金の支給は義務ではありません。ただし、就業規則で支給を定めた以上は、規程どおり支給する義務が生じます。
勤続25年の退職所得控除はいくら?
20年超の計算式(800万円+70万円×(勤続年数−20年))を適用し、800万円+70万円×5年=1,150万円となります。
退職金はいくらから税金がかかる?
退職所得控除額を超えた部分が課税対象になります。控除額の範囲内であれば、退職所得は0円となり所得税・住民税はかかりません。
退職金の支給は現金でないとダメ?
現金以外の方法(自社製品など)で支給すると、その時価が退職所得として扱われるなど税務上の扱いが複雑になります。退職金は原則として金銭で支給するのが無難です。
まとめ
看護師の退職金は、施設や勤続年数によって大きく異なるため「相場」は参考値として扱うのが適切です。制度を設計する際は、退職所得控除の仕組みを理解したうえで、規程を整備し、財源を計画的に準備しましょう。退職金制度を導入していない場合は、中退共などの外部制度から検討するのが負担の少ない第一歩です。退職金の計算・管理の基礎となる勤続年数や給与データは、勤怠・給与システムで正確に残しておくことが重要です。
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