2025年度(2025年4月〜2026年3月)の医療機関の倒産は71件で、20年間で最多となりました(東京商工リサーチ)。人口減少による患者数減や、光熱費・人件費の上昇が経営を圧迫しています。
この記事では、最新の倒産統計から見える経営リスクと、クリニック経営者が押さえるべき対策を解説します。
2025年度の医療機関倒産の状況
東京商工リサーチの調査(2026年8月公表)によると、2025年度の医療機関(病院・一般診療所・歯科診療所)の倒産は71件で、2006年度以降の20年間で最多となりました。
- 一般診療所(クリニック)32件・歯科医院31件:ともに20年間で最多。歯科医院は前年度比1.5倍増
- 病院(20床以上)8件:前年度(11件)より減少したが、コロナ禍以降では2番目に多い水準
- 倒産形態:破産69件(全体の97.1%)。民事再生法は2件のみで、再建型の倒産は少ない
負債額では、医療機関は1億円未満が46.4%にとどまり、全業態平均(76.7%)と比べて中堅規模以上の倒産が多いのが特徴です。
倒産の主な原因
調査では、倒産原因の内訳が次のように報告されています。
- 販売不振(患者減少・収益悪化)47件(66.1%):最多
- 既往のシワ寄せ16件(22.5%)
この2要因で約9割(88.7%)を占めており、患者の減少や診療報酬改定で収益が悪化し、そのまま倒産に至るケースが多いことがわかります。背景には、人口減少・経営者の高齢化・人手不足・設備の老朽化に加え、光熱費・人件費・備品代の上昇があります。
クリニック経営のリスク指標
経営の悪化は、次の指標に現れやすいとされています。
- 患者数の減少:新患・再来院数の月次推移を確認する
- 人件費率の上昇:人件費の売上比率が危険水域に近づいていないかを確認(分析の方法はクリニックの勤怠データを使った人件費分析を参照)
- キャッシュフローの悪化:売上はあっても現金の回収が遅れていないかを確認
- 光熱費・物価の上昇:固定費の増加が利益を圧迫していないかを確認
経営難の兆候の見つけ方は、開業ナビのクリニック経営難の兆候も参考にしてください。
経営リスクへの対策
月次で経営指標を確認する
売上・患者数・人件費率・固定費を毎月確認し、前年同月比で変化を捉えましょう。「なんとなく忙しい」ではなく、数字で経営状態を把握することが第一歩です。
人件費をデータで管理する
人件費は医療機関の最大のコストです。勤怠データから残業時間やシフトの偏りを可視化し、無駄な人件費を削減しましょう。人件費率の改善は、倒産リスクの軽減に直結します。
固定費と収益構造を見直す
光熱費・委託費・備品費など固定費の見直しと、自由診療や予防接種など収益性の高いサービスの検討を行います。単価を上げられない保険診療では、コスト削減と新規収益の両軸が必要です。
早めに専門家へ相談する
資金繰りに不安が出たら、早い段階で税理士・金融機関・経営コンサルタントに相談しましょう。医療法人の決算・経営管理は医療法人の決算と決算書も参考になります。
倒産が地域に与える影響
医療機関の倒産は、患者の受診機会の喪失につながります。特に高齢化が進む地域では、かかりつけ医を失った患者の通院負担が増え、「医療難民」の問題につながる可能性があります。
地域医療を守る観点からも、経営が厳しい医療機関には、事業承継やM&Aによる存続という選択肢があります。後継者や経営統合先が見つかれば、診療を継続しながら経営を立て直せるケースもあります。事業承継・M&Aの流れは開業ナビのクリニックの事業承継・M&Aで解説しています。
今すぐ始められる経営改善
- 月次指標の管理表を作る:患者数・売上・人件費率・固定費を毎月記録する
- 人件費の無駄を洗い出す:勤怠データで残業時間・シフトの偏りを確認する
- 固定費の見直し:光熱費・委託費・備品費の契約を見直す
- 収益性の高いサービスの検討:予防接種・健診・自由診療など
小さな改善の積み重ねが、倒産リスクの軽減につながります。
自治体の支援制度の活用
経営に不安がある場合は、自治体や中小企業支援機関の相談窓口を活用しましょう。経営相談・資金繰り支援・補助金の情報は、自治体や商工会議所・中小企業支援機関によって異なります(本記事では未確認のため、お住まいの自治体の窓口で最新情報を確認してください)。
また、医療機関向けの経営改善サービス(コンサルティング・人事労務支援など)も複数あります。まずは無料相談や診断から利用するのがおすすめです。
よくある質問
倒産は病院とクリニックどちらが多い?
2025年度はクリニック32件・歯科医院31件で、両者とも20年間で最多です。中小規模の医療機関ほど経営の影響を受けやすいと言えます。
倒産を防ぐためにすぐできることは?
まず月次の経営指標(患者数・人件費率・キャッシュフロー)を確認し、悪化の兆候があればコスト削減と相談を始めましょう。
歯科医院の倒産が特に多いのはなぜ?
歯科医院は開業数が多く競争が激しいうえ、2025年度は前年度比1.5倍増と苦境が際立ちました。患者数の減少と人件費・物価の上昇が主な要因とされています。
統計の対象(負債額)に注意点はある?
東京商工リサーチの調査は、負債1,000万円以上の倒産を集計したものです。小規模な廃業・休廃業は含まれない点に注意しましょう。
開業ナビの経営関連記事も参考にできる?
経営改善のKPIや黒字化の考え方は、開業ナビのクリニック経営改善のKPIや開業後の黒字化スケジュールも参考になります。
倒産統計はどこで確認できる?
東京商工リサーチの「TSRデータインサイト」や帝国データバンクの調査レポートで、医療機関の倒産統計を確認できます。報道や業界紙でも定期的にまとめられています。
経営指標はどのくらいの頻度で見るべき?
売上・患者数は月次、人件費率は毎月、キャッシュフローは週次〜月次で確認するのがおすすめです。年に1度の決算だけでは、経営悪化の兆候に気づくのが遅れます。
まとめ
2025年度の医療機関倒産は71件と20年で最多となり、販売不振(66.1%)と既往のシワ寄せ(22.5%)が主な原因です。患者数・人件費率・キャッシュフローを月次で確認し、悪化の兆候を早期に捉えることが、クリニック経営のリスク対策の基本です。地域医療への影響を考え、事業承継・M&Aや自治体の支援制度も視野に入れながら、勤怠データによる人件費管理など今すぐ始められる改善を積み重ねましょう。
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