令和8年度(2026年度)診療報酬改定で、通院・在宅精神療法の点数と算定要件が見直されました。精神保健指定医による初診への評価が新設される一方、多剤投与や施設基準未届出の場合の減算も注目されています。
この記事では、改定後の通院・在宅精神療法の点数表と、クリニックが押さえるべき実務ポイントを解説します。
通院精神療法の点数(令和8年度改定後)
改定後の通院精神療法(1回につき)の主な点数は次のとおりです(初診料を算定する初診の日に行った場合)。
| 区分 | 精神保健指定医 | 指定医以外 |
|---|---|---|
| 60分以上 | 650点 | 550点 |
| 30分以上60分未満 | 550点 | — |
初診の日以外に行う場合(再診以降)は、次のとおりです。
| 区分 | 精神保健指定医 | 指定医以外 |
|---|---|---|
| 30分以上 | 410点 | 390点 |
| 30分未満 | 315点 | 290点 |
改定のポイントは、精神保健指定医による初診30分以上60分未満に550点が新設されたことと、指定医による初診60分以上が650点に引き上げられたことです(岡大徳・実務解説)。
在宅精神療法の点数
在宅精神療法も、退院後支援期間中の患者への訪問などで算定します。主な点数は次のとおりです。
- 精神保健福祉法の入院措置を経て退院し、支援計画に基づく支援期間にある患者:660点
- 初診の日に行った場合:60分以上 指定医650点・指定医以外600点
- 初診の日以外:30分以上60分未満 指定医550点など
算定の要件と施設基準
通院・在宅精神療法を算定するには、精神科を標榜し、精神科を担当する医師が診療を行うことが前提です。また、改定後は精神保健指定医以外の医師が行う場合の施設基準の届出が論点になっているため、自院が届出済みかを確認しましょう。
施設基準の細目は厚生労働省の通知で定められています。届出の要否や書類は管轄の地方厚生(支)局に確認するのが確実です。
診療時間の記録と算定の実務
改定後は、30分以上・60分以上といった診療時間の区分が点数に直結します。診療録に開始時刻と終了時刻を正確に記録し、指定医の有無とあわせて算定根拠を残すことが重要です。
- 初診:30分未満・30分以上60分未満・60分以上を記録
- 再診以降:30分未満・30分以上を記録
- 処方内容:抗うつ薬・抗精神病薬の種類数を確認し、多剤投与の減算対象にならないようにする
- 副作用評価:抗精神病薬服用者には客観的指標による評価を行い、特定薬剤副作用評価加算(25点・月1回)の対象を記録する
20歳未満の患者への特例
20歳未満の患者に60分以上の通院・在宅精神療法を行った場合(当該医療機関の精神科を最初に受診した日から3ヶ月以内に限る)は、1,200点が算定できます。初診導入期の集中的な支援を評価する仕組みです。
時間の記録がなければ算定できないため、診療時間の管理を徹底しましょう。
クリニックが準備すべきこと
改定後の算定に対応するため、次の準備を進めましょう。
- 診療時間の記録方法を整備する:電子カルテや診療録に開始・終了時刻を残す運用にする
- 指定医の体制を確認する:精神保健指定医の在籍状況と診療スケジュールを整理する
- 施設基準の届出状況を確認する:指定医以外の医師が診療を行う場合の減算に備える
- 処方内容の監査:多剤投与にならないよう、処方チェックの仕組みを確認する
スタッフの勤怠・シフト管理も、診療体制の維持に欠かせません。クリニックの勤怠管理の仕組みはクリニックの勤怠管理マニュアルも参考にしてください。
多剤投与の減算
1回の処方で3種類以上の抗うつ薬、または3種類以上の抗精神病薬を投与した場合、厚生労働大臣が定める要件を満たさないと、所定点数の100分の50に相当する点数で算定します。
多剤投与を避け、減算対象にならない処方設計を心がけることが重要です。
指定医以外の医師が行う場合の減算
令和8年度改定では、精神保健指定医以外の医師が通院精神療法を行う場合、施設基準の届出がなければ所定点数の100分の60に減算される見直しが示されています(答申時点の個別改定項目。最終的な取扱いは告示・通知で確認が必要です)。
精神科を標榜するクリニックでは、自院が施設基準の届出を行っているかを確認し、未届出なら届出の準備を進めましょう。
改定で変わること・変わらないこと
令和8年度改定の通院・在宅精神療法の変更点を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 変更内容 |
|---|---|
| 指定医による初診30分以上60分未満 | 550点を新設 |
| 指定医による初診60分以上 | 650点へ引き上げ |
| 指定医以外の医師(施設基準未届出) | 所定点数の100分の60に減算 |
| 多剤投与 | 要件を満たさない場合は100分の50で算定(従来どおり) |
| 診療時間の記録 | 点数区分の判定に直結(重要性が増す) |
評価が上がる領域(指定医の初診)と下がる領域(指定医以外・未届出)が同時に生まれた点が、今回の改定の特徴です。自院がどちらに位置するかを把握し、必要な準備を進めましょう。
その他の算定のポイント
- 特定薬剤副作用評価加算:抗精神病薬を服用する患者に客観的指標による副作用評価を行った場合は、月1回に限り25点を加算
- 20歳未満の患者に60分以上の通院・在宅精神療法を行った場合(当該医療機関の精神科を最初に受診した日から3ヶ月以内)は1,200点
- 看護師・精神保健福祉士による療養状況の把握など、チームでの支援に係る要件も設定されています
改定全体の流れは診療報酬改定2026(令和8年度)のクリニック対応を、精神科開業を検討中の方は精神科クリニック開業ガイドをご覧ください。
よくある質問
精神保健指定医とは?
精神保健指定医は、精神保健福祉法に基づき都道府県知事が指定する医師です。指定医による診療は点数が高く設定されています。
初診と再診で点数が変わるのはなぜ?
初診は診療時間や指定医の有無で細かく評価されます。改定後は初診30分以上60分未満の指定医評価(550点)が新設され、診療時間の記録がより重要になっています。
多剤投与の判定はどうする?
1回の処方で3種類以上の抗うつ薬、または3種類以上の抗精神病薬を投与した場合が対象です。厚生労働大臣が定める要件を満たす場合は減算されませんが、要件に該当しない場合は所定点数の100分の50で算定します。
施設基準の届出はどこに出す?
精神科関連の施設基準は、管轄の地方厚生(支)局に届け出ます。自院が対象になるかは、厚生局の届出一覧や通知で確認しましょう。
認知療法・集団精神療法は別の点数?
認知療法・認知行動療法や集団精神療法は、通院・在宅精神療法とは別の項目で算定します。それぞれの算定要件を確認しましょう。
改定後の点数表はどこで確認できる?
医科診療報酬点数表(令和8年度版)は厚生労働省のホームページで公表されています。最新の点数・注釈を確認してから算定しましょう。
まとめ
令和8年度改定で、通院・在宅精神療法は精神保健指定医による初診の評価が拡充され、多剤投与や施設基準未届出の減算も強化されました。自院の体制(指定医の有無・施設基準の届出状況)を確認し、診療時間や処方内容の記録を正確に残す運用が求められます。点数や要件の最終的な取り扱いは厚生労働省の告示・通知で確認しましょう。
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