訪問看護ステーションは、看護師などが利用者の自宅を訪問して看護を提供する事業所です。開設を検討する看護師・医師・事業者も増えていますが、保険診療(訪問看護療養費)の指定を受けるには、厚生労働省令で定められた人員・設備・運営の基準を満たす必要があります。
この記事では、指定訪問看護の基準を中心に、人員要件・管理者の要件・開設の流れを整理します。
訪問看護ステーションとは
訪問看護ステーションは、医師の指示に基づいて、看護師などが利用者の自宅を訪問し、療養上の世話や必要な診療の補助を行う事業所です。医療保険(健康保険など)の訪問看護療養費の指定を受けた事業所は、指定訪問看護ステーションと呼ばれます。
訪問看護は、医療保険と介護保険の両方で提供されるサービスです。医療保険の訪問看護療養費の指定を受ける基準と、介護保険の訪問看護(指定居宅サービス)の基準は別に定められています。開設に当たっては、どの制度でサービスを提供するかの設計が重要です。
人員基準(指定訪問看護の基準)
指定訪問看護の人員基準は、厚生労働省令(指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準)に定められています。主な要件は次のとおりです。
- 看護職員(保健師・助産師・看護師・准看護師)の員数は、勤務延時間数を常勤換算して2.5以上
- 看護職員のうち1名は常勤でなければならない
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、事業所の実情に応じた適当数
「常勤換算2.5」は、パートなどの非常勤職員を含めて、常勤換算で2.5人分以上の看護職員を置くことを意味します。開業当初は、この人員基準を満たせる採用計画が必須です。
管理者の要件
指定訪問看護ステーションには、管理者を置くことが必要です。管理者の要件は次のとおりです(同省令第3条)。
- 常勤の管理者を置く(専らその職務に従事する。管理上支障がなければ他の職務や他事業所の職務を兼ねられる)
- 管理者は、原則として保健師・助産師・看護師(准看護師は含まない)
- 指定訪問看護を行うために必要な知識・技能を有する者
管理者は、職員の管理や利用申込みの調整、業務実施状況の把握など、事業所運営を一元的に行う役割を担います(同省令第20条)。
設備・運営の基準
設備や運営についても、次のような基準があります。
- 事業の運営に必要な広さの専用の事務室を設ける(他の事業と兼ねる場合は専用の区画)
- 訪問看護の提供に必要な設備・備品を備える
- 訪問看護の提供開始には、主治医の文書による指示を受ける
- 訪問看護計画書・訪問看護報告書を作成し、利用者に説明する
- 運営規程(事業の目的・従業者の職種員数・営業日時・実施地域・緊急時対応など)を定める
- 訪問看護記録などの記録は、完結した日から2年間保存する
緊急時の対応体制や、利用者からの苦情対応、事故発生時の対応なども、運営基準として定められています。
開設の流れ
訪問看護ステーションの開設は、おおむね次の流れで進みます。
- 事業計画の策定(サービス内容・人員・資金計画・収支見込み)
- 管理者・看護職員の確保(人員基準を満たす採用計画)
- 事務所・設備・備品の準備
- 指定申請の準備と提出(管轄の地方厚生局等に確認)
- 指定後の開設・運営開始(請求業務・運営規程の整備を含む)
指定申請の手続きや必要書類は、開設する地域を管轄する地方厚生局などによって案内が異なります。計画の初期段階で管轄窓口に確認し、スケジュールに余裕を持たせることが大切です。
押さえておきたいこと
開業資金の相場や収益の目安は、事業規模や地域によって大きく異なるため、ここでは金額を示していません。事業計画の段階で、賃料・人件費・運転資金・訪問看護の収入見込みを個別に試算する必要があります。
医療保険と介護保険の訪問看護の関係
訪問看護は、医療保険(訪問看護療養費)と介護保険(介護給付としての訪問看護)の両方で提供されます。利用者がどの制度でサービスを受けるかは、主治医の指示や要介護認定の状況によって異なります。
医療保険の訪問看護療養費の指定に加えて、介護保険の訪問看護事業者の指定を受ける事業所もあります。両方の指定を受ける場合は、それぞれの基準と請求の仕組みに対応できる体制が必要です。
- 開設時にどの制度の指定を目指すかを決め、管轄窓口に確認する
- 主治医との連携(指示書の受領・訪問看護計画書の提出)の体制を整える
- 訪問看護計画書・報告書の作成と記録の保存を、日常業務に組み込む
- 訪問看護療養費の請求業務(審査支払機関への提出)を担う体制を決める
開業後の運営では、訪問看護計画書の作成と説明、記録の整備、請求業務を回すことが継続的に求められます。人員基準を満たすだけでなく、こうした運営業務を担える体制を、開設前に設計しておくことが大切です。
開設前に確認したいチェックリスト
訪問看護ステーションの開設を検討する際は、次の項目をチェックリストとして確認すると、抜け漏れを防げます。
- 人員基準(看護職員の常勤換算2.5以上・うち1名常勤)を満たせる採用計画があるか
- 管理者(常勤・保健師または看護師など)を確保できるか
- 専用の事務室と必要な設備・備品を用意できるか
- 主治医との連携と、訪問看護計画書・報告書の運用を理解しているか
- 指定申請の窓口と必要書類を確認したか
- 開業後の請求業務(審査支払機関への提出)の体制を決めたか
開設の準備は、人員確保と事務所の確保に時間がかかるため、検討を始めたら早めにスケジュールを立てるのがおすすめです。管轄の窓口に相談しながら、指定申請の準備を進めてください。
まとめ
訪問看護ステーションの開設には、看護職員の常勤換算2.5以上(うち1名常勤)という人員基準や、管理者の要件、設備・運営の基準を満たしたうえで、指定申請を行う必要があります。人員確保と事務所の準備は、時間がかかるため、開設時期の逆算で計画を立てましょう。
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