内科クリニックの開業を検討する医師向けに、需要の現状、開業形態、開業資金、立地・競合調査、集患とかかりつけ機能の設計までを整理します。内科は診療所の中でもっとも多い診療科であり、開業しやすさと競合の多さが表裏一体のテーマです。
開業費用の相場やエリアごとの需要は立地・規模によって大きく異なるため、この記事では断定しません。公的統計と管轄窓口、開業実績のある専門家への確認を前提に、判断の枠組みとしてお読みください。
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無料で診断を受ける →内科の需要と競合の現状
厚生労働省の医療施設調査(令和5年・2023年)によると、内科を標榜する一般診療所は64,747施設で、一般診療所全体の61.7%を占め、前回調査(令和2年)から604施設増加しています。内科は診療所の過半数を占める最も多い診療科で、都市部ほど競合が集中します。
出典: 令和5年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況(統計表)
患者の受療動向は厚生労働省の患者調査で確認できます。開業エリアの人口構成(高齢化率・生活習慣病の受療状況)と、既存の内科診療所の診療時間・得意分野を突き合わせて、需要と競合の両方を確認してください。
内科が担う診療とかかりつけ機能
内科は高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病の継続管理、かぜ等の急性期外来、特定健康診査・特定保健指導(高齢者の医療の確保に関する法律に基づくメタボ健診)など、幅広い診療を担います。高齢化が進む地域では、在宅医療・往診への対応が差別化要素になります。
2026年(令和7年)4月からは、医療法改正によりかかりつけ医機能報告制度が施行され、医療機関が担うかかりつけ医機能を都道府県へ報告する仕組みが始まっています。制度の詳細は、開業前に厚生労働省の資料と管轄の保健所で確認してください。
出典: 厚生労働省 かかりつけ医機能報告制度関係資料、厚生労働省 特定健康診査・特定保健指導関係資料
開業形態の選び方
内科の開業形態は、大きく「個人開業」「テナント開業」「医療モール・複合施設」「医療法人による開設」に分かれます。医療施設調査(令和5年)によると、一般診療所の開設者は医療法人が46,717施設(44.5%)、個人が39,208施設(37.4%)で、個人開業と法人化が併存しています。
- 個人開業…意思決定が速く、初期の意思決定負荷が低い。運営の負担はすべて自身に集中する
- テナント開業…物件取得費を抑え、駅前など集患しやすい立地を取りやすい
- 医療モール…他診療科・薬局との相互紹介が見込める。競合の隣接に注意
- 医療法人化…役員・決算・報告義務など運営ルールが加わる。事業継続と資金調達の選択肢が広がる(「医療法人の運営」参照)
| 開業形態 | 主な特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 個人開業(自院・自宅) | 意思決定が速く固定費を抑えやすい。物件取得費がかかる | 初期投資を抑えて診療に集中したい場合 |
| テナント開業 | 駅前などの好立地を取りやすく、初期費用を抑えられる | 集患を最優先し、契約リスクを許容できる場合 |
| 医療モール・複合施設 | 他診療科・薬局との相互紹介が見込める | 紹介導線を作りたい場合。賃料・運営ルールを確認 |
| 医療法人による開設 | 事業継続性と資金調達の選択肢が広がる。運営・報告義務が増える | 複数拠点や承継を視野に入れる場合 |
開業資金と運転資金の考え方
内科の開業費用は、物件取得費・内装工事費・医療機器・電子カルテや予約システムなどのシステム費用で構成されます。診療科別の費用の考え方は「診療科別の開業費用」で整理していますが、個別の相場は立地・規模で異なるため、見積もりで確認してください。
黒字化までの運転資金を確保することが資金計画の要点です。黒字化のスケジュールは「開業後の黒字化スケジュール」、資金調達の選択肢は「開業資金の調達方法」で確認できます。
収入源は、一般外来の診療報酬に加えて、特定健康診査・特定保健指導の実施委託、予防接種、在宅医療・往診などがあります。特定健診は一定の時期に集中するため、健診枠と通常外来枠の予約設計を先に決めておかないと、受付・看護師の負荷が偏ります。どの収入源にどの程度の人員を割くかは、開業地の人口構成と健診の実施状況を確認して決めてください。
開業エリアの選び方と競合調査
内科は「かかりつけ」として固定化されやすい一方、開業時点で既存のかかりつけ医がいる患者は動きません。開業エリアの選定では、以下の4点を確認します。
- 人口と高齢化率、将来人口推計(高齢者の多い地域は生活習慣病・在宅の需要が見込める)
- 2km圏内の内科標榜医療機関の数と診療時間・休診日
- 駅・バス・駐車場などのアクセス条件
- 近隣の病院・診療所との紹介関係を作れるか
競合調査は「勝つこと」ではなく、自院がどの患者層に、どの時間帯で、何を提供するかを決めるために行います。
集患と地域連携の設計
内科の集患は、地域密着型の関係構築が中心になります。開業直後は、以下の経路を組み合わせて新患を拾います。
- かかりつけ登録…受診した患者に次回予約を案内し、継続管理の関係を作る
- 予防接種・健診の受託…自治体の予防接種・特定健診の実施医療機関になる
- 紹介連携…近隣の診療所・病院・薬局との紹介ルートを作る
- Web・MEO…「内科 駅名」などの検索で見つかるプロフィールとホームページを整える(「クリニックのローカルSEO・MEO対策」参照)
再来院の仕組みも開業直後から作ります。診察後の次回予約案内、リマインド(予約日の前日連絡)、予約システムでの再来導線を整え、再来率とキャンセル率を月次で確認します。詳細は「クリニックの再来院率向上」と「無断キャンセル対策」で整理しています。
スタッフと運営体制
内科の運営は、受付・看護師・事務の基本体制から始められます。予防接種・健診・在宅医療に対応する場合は、その分の人員と研修計画を追加します。待ち時間の管理は内科の満足度に直結するため、Web予約と順番案内の導入、混雑時間帯のデータ確認を最初から運用に組み込みます。
電子カルテと予約システムの選定は、生活習慣病の継続管理(前回値との比較表示)、健診データの取り込み、リマインド機能の有無で比較します。受付で確認すべき項目(保険証・薬手帳・健診結果)と、診療後に作成する文書(紹介状・診断書・処方箋)の流れをマニュアル化し、開業1か月目から運用を回せるようにします。
開業後の指標と改善
開業後は、新患数(経路別)、再来率、予約枠の消化率、健診・予防接種の件数を月次で確認します。指標の設計と改善の進め方は、「クリニック経営改善のKPI」で整理しています。
まとめ
内科は診療所の過半数を占める競合の多い診療科ですが、かかりつけ機能と地域連携を設計できれば、安定した外来基盤を作りやすい開業分野です。公的統計でエリアの需要と競合を確認し、開業形態・資金計画・集患経路を決めてから開業に進んでください。開業の全体像は、開業ナビの関連記事と無料診断で固められます。